002 2017/7/25

嚥下障害患者への呼気筋トレーニングについて

リハビリテーション学部 理学療法学科
俵祐一 先生

 みなさんはじめまして、理学療法学科の俵です。今年度より准教授として着任しました。

内部障害の中でも特に呼吸障害に対するリハビリテーションが専門です。
本学大学院リハビリテーション科学研究科(修士)修了生でもあります。
どうぞよろしくお願い致します。

 今回私が紹介しますのは、現在研究を進めています呼気筋トレーニング(Expiratory Muscle Strength Training:EMST)についてです。 通常、呼吸器疾患に対する呼吸筋トレーニングは、呼吸困難の軽減を目的に吸気筋である横隔膜を強化することがほとんどです。 呼気筋の強化は今まであまり注目されてなかったのですが、自己排痰を楽にするための咳嗽機能の向上を目的として行うことはあります。 しかし近年、言語聴覚士の方々はご存知だと思いますが、嚥下機能の向上にも有用であることが報告されています。

 これまでの報告では、パーキンソン病やALS、脳卒中患者などでEMSTの効果が検討され、結果にばらつきはあるものの咳嗽および嚥下機能向上、QOL改善などを認めています。 われわれの報告でも、脳卒中後の嚥下障害患者に対してEMSTを実施した結果、咳嗽機能および嚥下機能の改善や嚥下に関する自覚症の改善を認めました。 しかし、嚥下障害と最も関連が強い誤嚥性肺炎に対する報告は今のところ見当たらないです。

 日本では肺炎が死亡原因の第3位にまで上がっており、高齢社会に伴って今後も特に誤嚥性肺炎患者の増加が懸念されています。 そのため誤嚥性肺炎の予防目的に、EMSTによって痰を排出するための咳嗽機能強化ならびに嚥下機能改善を同時に達成できる可能性があるのではと考え、肺炎後の患者を対象に調査を進めたいと考えています。 興味のある方は是非声をかけて下さい。 よろしくお願いします。