009 2019/04/08

予防理学療法学研究

リハビリテーション学部 理学療法学科
矢倉千昭先生

 今日の医学では、病気の原因解明に加え、疾病予防と健康増進、健康にとって有害な環境や行動あるいは社会的要因を取り除くことにより、積極的にQOLを向上させることが重要な目標となっています。理学療法分野においても、世界理学療法連盟は、「理学療法士は障害を予防し、病人および障害者を社会復帰させるために働くとともに、予防医学においても活動的であり、また臨床研究も行う」と定義しています。
 私は、2002年から2010年まで、島根県出雲市で、肥満やメタボリックシンドロームの改善・予防に関するフィールド研究に携わってきました。この研究に携わるようになったのは知り合いの先生からのお誘いがきっかけで、フィールド研究には人との縁が大切だと思います。最近、地域に出る機会も増え、肥満改善や生活習慣病予防、就労者の健康増進や職業病予防など、少しずつ研究活動を進めています。
 臨床における理学療法は、治療による機能や活動レベルの改善を目指します。しかし、長期的には再建した生活の維持・向上、病気の再発を防ぐことが重要となります。予防理学療法の主なアウトカムは健康行動の獲得であり、行動が変わり継続するためにも、急性期や回復期からのアプローチが大切です。また、予防理学療法学の発展は、自治体の健康政策や企業の産業衛生など、職域の拡大にもつながると考えています。近い将来、予防理学療法学の視点を持った理学療法士があらゆる場面で活躍していることを期待し、研究していきたいと思います。