016 2020/11/02

慢性腎不全患者に対する腎臓リハビリテーション

リハビリテーション学部 理学療法学科
矢部広樹先生

 慢性腎不全は、疾患別リハビリテーションの対象疾患ではありませんが、セラピストが日常的に診療する多くの患者さんが合併しています。担当の患者さんが既往歴に慢性腎不全を持ち、血液透析を行っている、という事例も珍しくありません。しかしながら、セラピストの多くは慢性腎不全や血液透析に関する知識が少ないことが多く、血液透析を数ある合併症の中のひとつ、という簡単な認識であることが多いのでは無いでしょうか。

 血液透析は、血中の余剰な水分と毒素を除去する治療法ですが、その合併症は多岐に渡ります。透析による除水が心血管系へ影響を与えるのはもちろんのこと、透析関連低血圧、透析後疲労感への対応、シャントの管理、アルブミンの漏出と筋タンパク異化の問題など医学的な管理に加え、透析日の身体活動、就労、外来透析施設への通院方法等、セラピストが評価・介入すべき点が多く存在します。

 皆さんは透析患者を担当した場合、透析に関連した項目をどれだけ評価しているでしょうか?毎日の透析記録、水分摂取の状況と体重管理、各種血液データ、シャントの状況、血圧管理の状況、などなど、どれだけチェックしていますか?外来透析通院の状況、透析後の生活、また透析治療に伴う家族の負担等、確認していますか?またこれらのアセスメントから、担当患者さんの状況をどれだけ正確に把握できていますか?医師や透析室・病棟の看護師は、これらの状況の把握に努めています。また、これら透析患者の状況はリハビリテーションにも影響します。透析患者を診療する場合は、上記を必ず評価しなければなりません。

 現状、日本のリハビリテーションにおいて、透析患者の透析治療に伴う病態への配慮は、皆無と言っていいかもしれません。私たちは、このような現状を打破し、透析患者さんに優しいリハビリテーションを提供するために、臨床と研究の実践から、新たな腎臓リハビリテーションの方法を日々検討しています。

 透析治療の理解、透析患者のアセスメントの方法と介入について興味がある方は、ぜひご連絡ください。一緒に新たな腎臓リハビリテーションを作っていきましょう。